IT・システム判例メモ

弁護士 伊藤雅浩が,システム開発,ソフトウェア,ネットなどのIT紛争に関する裁判例を紹介します。

SEOサービスの義務内容 東京地判平24.8.8(平23ワ29946)

SEOサービス委託契約の合意内容が問題となった事案。

事案の概要

宅建材補修工事業のYは,自己のウェブサイトの制作,ホスティング保守(ドメイン取得,サーバ管理等),アクセス解析ソフトのライセンス等をXに委託した。XはYに委託等を請求していたが,YはXとの契約内容として,検索エンジンの検索結果上位に表示されることが約束されていたとして,Yの債務不履行を主張していた。

ここで取り上げる争点

XY間の契約内容(XY間の保守契約に検索上位表示が合意として含まれるか)

裁判所の判断

裁判所は,YがXに提出した確認書の内容に照らして,Yの主張を退けた。

Yは、X担当者が、Yに対して、Yのホームページが、Google及びYAHOOでトップページに掲載されるよう順位が上がると説明し、Yはこれを信頼して上記契約を締結したと主張する。
(略)
しかし、FS WEBプロモーションパック(2)に関する確認書(以下「本件確認書」という。)を見ると、確認事項に「フリーセルの詐欺的行為、その他不当な行為(例えば「検索エンジンでキーワード検索すれば必ず○○番以内等の順位保証をします」、「ホームページを導入すれば売上が上がります」等と断定するようなセールストーク)はありましたか。右記に○印をご記入下さい。との問いに、Yは「なし」の欄に○をしていること、また、お客様確認欄にYが署名押印していることが認められる。

Yは、本件確認書の記載の経緯について何ら陳述書で説明をしておらず、Yが個人で事業を行っていることを考えると、本件確認書の確認欄に署名押印する意味を十分に認識しているはずであるから、本件確認書に矛盾するYの主張は採用できない。

Xは,Yとの契約に基づいてSEO対策等を実施したことが認められ,Xの請求が認容された。

若干のコメント

※本日の東弁インターネット法律研究部会で紹介された裁判例の判決文にあたったものです。

本件はSEO対策そのものが契約の中心となっていたものではないので,SEO業務委託契約の性質やその債務の内容が正面から争われた事案ではありません。しかしながら,契約締結の際に,ユーザに提出させた書面に,

不当な行為(例えば「検索エンジンでキーワード検索すれば必ず○○番以内等の順位保証をします」、「ホームページを導入すれば売上が上がります」等と断定するようなセールストーク)はありましたか

という質問に「No」と記入されていたことを決め手に,検索エンジンで順位が挙がること,上位表示されることが契約のないようになっているわけではないとしました。


SEO業者には様々なところがあり,トラブルも少なくありません。具体的な委託業務の内容を契約段階で明らかにし,適正な取引が行われることが望まれます。