プログラムの著作権侵害に対する損害額が問題となった事例。
事案の概要
サーバ管理等に関するプログラム(本件プログラム)を開発したXは,平成18年5月28日,レンタルサーバ業のYに対し,本件プログラムの利用を許諾した(本件契約)。
本件契約は平成22年5月21日に解除によって終了したが,Xは同月28日ころ,Yが運営するウェブサイトで,本件プログラムが利用されていることを発見した。そこで,Xは,Yに対して利用中止等を求めたところ,同年6月に,Yはウェブサイトから本件プログラムを削除した。
その後,平成23年3月になって,再びYのウェブサイトで本件プログラムが利用されていることをXが発見したため,再びXに対して利用中止,利用料支払の通告をし,Yは本件プログラムを削除した。
原審(大阪地判平23.8.25)では,Xの差止請求を認めるとともに,損害賠償額を10万円と認定したが,Xは,損害賠償の額を不服として控訴した。
ここで取り上げる争点
Xの損害の額
裁判所の判断
損害の額が本件の争点であるとしつつも,知財高裁は気になる言い回しを用いつつ,次のように述べて,原審の結論を維持した。
プログラムに著作物性があるというためには,プログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表現でなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることを要するところ,本件証拠上,本件プログラムが著作物性を備えるものであるといえるかについては疑義がある。
しかし,前記のとおり,当審における争点は,専ら損害の額であるので,本件プログラムに著作物性があることを前提として,損害の額について検討すると,本件プログラムは,平成18年以前に作製されたものであること(甲1),本件契約に基づく本件プログラムの利用料等は,1か月2万8380円であったこと,本件プログラムと同様の機能を有する他のプログラムについて,インターネットで無料配布されたり,相当低廉な価格で提供されるものもあること(弁論の全趣旨),Yが同社のインターネットホームページ上で本件プログラムを利用したのは,平成22年5月28日頃から同年6月頃までと平成23年3月28日頃から同年4月7日までの比較的短期間であることなどからすれば,本件で控訴人が被った損害の額は,原判決が認容した合計10万円を超えるものとは認められない。
なお,遅延損害金の割合について,Xは,本件契約の遅延損害金利率(14.5%)を主張していたが,この点は退けられた。
また,Xは,本件契約所定の年14.5%の割合による遅延損害金の支払を求めているが,不法行為の遅延損害金の法定利率は年5分であり(民法404条),XとYとの間でその利率を年14.5%とする合意があったとみるべき事情はないから,Xの主張は採用することができない。