開発導入が終わっていないとして既払い金の返還を求めたユーザに対し,ベンダから開発導入の残代金と,管理契約委託料の請求がなされた事例。
事案の概要
XはYに対し,オークションサイトに必要なシステムを3サイト分導入する契約を代金157万5000円で締結し,内52万5000円を支払った。しかし,Xは,Yに債務不履行があるとして契約を解除し,既払い金の返還を求めた(本訴請求)。
これに対し,Yは,システムの導入は完了しているから残代金105万円と,別途締結された管理契約に基づいて,各月12万5000円の管理料24か月分の302万4000円の支払いを求めた(反訴請求)。
ここで取り上げる争点
サイトの開発は完了しているとして,本訴請求には理由がないとされた。
ここでは,反訴請求(管理契約に基づく報酬請求の可否)について取り上げる。
裁判所の判断
裁判所は,継続的契約である管理契約が締結されたことを認めつつも,Xの申し入れによって解約されたとした。
本件管理契約が継続的契約である以上,XY間で,特に契約期間中の中途解約を禁止することを合意していない限り,本件契約の解釈として,解約自体は妨げられず,ただ,Xは,解約により被告に生じる損害を賠償しなければならない立場に置かれるものというべきである。そして,原告被告間に,本件管理契約について中途解約を禁止する旨合意があったことの的確な主張立証はないから,本件管理契約は,Xの解約申入れにより平成23年4月限りで終了したものであり,Xは,契約に基づき同月分までの料金113万4000円の支払義務を負うとともに,解約に伴いYが被った損害を賠償しなければならないこととなる。
そして, Xの解約申入れによってYに生じた損害は,Yが管理契約のために外部委託した事業者への支払い(こちらは中途解約できないもの)の7か月分162万8760円だとした。
よって,導入契約の残代金105万円と,管理契約の未払い代金及び解除に伴う損害賠償として276万2760円の支払い義務を認めた。
若干のコメント
サイト開発委託した事業者が,既払い金の返還を目論んだところ,残代金の支払い等々,本訴請求の約8倍の反訴請求が提起され,そのほとんどが認められるという返り討ちに遭った事案でした。
それ自体は特筆すべきものではありませんが,気になったのは,反訴請求が,Yの請求によれば,管理契約に基づく委託報酬請求であったのに対し(民法648条),裁判所が認容したのは,委託報酬は一部だけで,その残りは,委託者であるXが解約したことによる損害賠償(民法651条2項による請求と思われる。)であったことです。
「争点に関する当事者の主張」の部分を見ても,Yは,委託報酬としか述べておらず,Xの解除の主張(抗弁)も,Yによる損害賠償の主張(これは別の訴訟物)も見当たりません。
判決書に記載されていないというだけで,まさか弁論主義違反ということはないと思いますが,少しひっかかったケースでした。