IT・システム判例メモ

弁護士 伊藤雅浩が,システム開発,ソフトウェア,ネットなどのIT紛争に関する裁判例を紹介します。

【争点別】システム開発をめぐる紛争インデックス

システム開発紛争事例を,争点別にまとめました。非常に乱暴に要約しているので,詳細はリンク先または判決文をご確認ください。個別のエントリを追加したら随時インデックスも更新します。

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(仕掛中)【争点・分野別】(システム紛争以外の)インデックス(仕掛中)

システム開発・運用関連裁判例以外の当ブログ収録裁判例について,論点・分野別のインデックスをまとめておきます(同一の裁判例が複数個所に記載されていることもあります)。

非常に乱暴に要約しているので,詳細はリンク先または判決文の原文でご確認ください。

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請負契約の成否と人件費相当の損害 東京地判平30.3.6(平28ワ37748)

システム未完成の責任を問われた開発者が契約の成立を否定するとともに,注文者の人件費相当額の損害について争われた事例。

事案の概要

X(発注者)はY(開発者個人)に対し,Xの業務システムを75万円で開発することを委託し,そのうち40万円が支払ったが,期限までに完成しなかったとして,契約解除を通知し,既払金の返還及び人件費・PC購入費等の損害約200万円の賠償を求めた。

これに対し,Yは,契約書もなく,開発はあくまでボランティアであって,開発を受託する合意などはなかったと主張した。

ここで取り上げる争点

(1)契約の成否
(2)解除による損害の範囲

裁判所の判断

争点(1)契約の成否

契約書は作成されていなかったが,裁判所は以下の事情を挙げてXが主張する契約の存在を認定した。

  • Xは,平成27年4月2日,システム開発等の業務を依頼する「a」というサイトを通じてインターネット上のオークションやショッピングサイトの商品編集システム(本件システム)に係る依頼を発信し,複数の業者から当該システムに係る提案を受けたこと,そのうちの一業者がYであったこと,
  • Yは,Yの報酬金額を75万円,予定納期を同月30日とするシステム開発の提案をしたこと,
  • 当該提案には,Xの基幹システムを踏まえて,新規システムのアイコンをパソコンデスクトップ上等でクリックすると管理画面が立ち上がり,各種操作を行い,タスク実行を行うと,管理PCの常駐ソフト(バックグラウンドで動作するサービス)に設定情報が渡り,指定時間イベント等で登録や削除などの処理を行う方式であり,自動処理の自由度が高く,運用後の改修が容易であること,セキュリティが高いレベルで確保できること,開発には基幹システムSQLサーバのテーブル構成などの情報や各種アカウントについて秘密保持契約を締結した上で開示してもらうこと,最終的にシステムで使用するパソコンを貸与してもらい,設定等を行うことなどが記載されていること,
  • その後,同月9日にはXYで打ち合わせを行い,本件システムに関し,詳細な仕様に関する話をし,また,上記aサイトを介さずに直接取引を行うこととしたこと,
  • YはXに対し,同月10日には,必要な開発環境のOSの購入のため,手付金として20万円の支払を求め,Xがこれを支払ったこと,
  • 同月13日ころまでには,XY間で,Yが本件システム開発を行うためのXの秘密保持契約を締結したこと
争点(2)解除による損害の範囲

Yがシステムを完成させなかったことについては争いがなく,解除による損害の範囲が争われた。
そのうち,裁判所は,Yの勧めに応じてXが購入したPCの代金約13万円については,損害として認めつつ(ただし,この点について本人訴訟だったYはあまり争わなかったようである。),人件費相当額については次のように述べて否定した。

従業員への給与やX代表者の報酬は,本件システム導入の如何にかかわらず当然に支出すべき経費と考えられるところ,本件において,本件システムの導入がされれば,X従業員ないしX代表者が他の業務に従事することにより具体的に利益が得られたというような具体的事情の主張立証はないから,Xの主張は理由がない

若干のコメント

本判決は,特に注目すべき事例というわけではありませんが,「あるある」事例の一つとして取り上げました。おそらくクラウドソーシングサービスを利用して,個人に開発を委託してトラブルになった事例だと考えられます(判決文中では「a」というサイトが書かれていました)。
契約書こそなくても,開発者が具体的な金額を含む提案を行い,NDAも取り交わしたり仕様に関するやり取りをしていたりしていれば,契約の成立を否定することは困難だったろうと思われます。
他方で,各種の事例で見られたように,発注者側の人件費等の損害については認められていません。

1ライセンスでの使用可能な範囲の解釈と,違約金合意の有効性 東京地判令3.3.24(平30ワ38486)

ソフトウェアの1ライセンスで許諾される利用可能な範囲と,通常料金の10倍という高額な違約金を定める条項の有効性が問題となった事例。

違法コピーのイラスト(ディスクあり)

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