IT・システム判例メモ

弁護士 伊藤雅浩が,システム開発,ソフトウェア,ネットなどのIT紛争に関する裁判例を紹介します。

dentsuドメイン使用差止 東京地判平19.3.13

不正競争防止法に基づいて,ドメインの不正保有・使用の差止請求が認められた事案。

事案の概要

Yという者が,dentsu.biz, dentsu.org, dentsu.vcなど,""dentsu""の文字を含む8つのドメインを取得し,電通に対して,「ドメインを10億円で買い取ってくれ」という要求をしました。これに対し,電通がYに対して,不正競争防止法に基づいて,ドメインの使用差止や,登録抹消手続申請を求めた事案です。

若干の解説

平成13年不競法改正により,

  • (1) 不正の利益を得る目的で,又は他人に損害を加える目的で,
  • (2) 他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名,商号,商標,標章その他の商品または役務を表示する者をいう。)と同一もしくは類似のドメイン名を,使用する権利を取得・保有・使用する行為

を「不正競争」と定義し(2条1項12号),その行為に対して,差止,損害賠償ができるようになりました。単に,他人の商標と同一のドメイン名を取得するだけでなく,(1)の不正の利益を得る目的等が要件となっています。


ただ,商品表示に関する2条1項1号のような周知性までは要求されていないため,その点では権利者からみたハードルは低いことになります。

裁判所の判断

特に大きな争点もなく,10億円で買い取ってくれ,というメールを出したことや,ドメイン取得費用は6万円程度であったことから,上記(1)の主観的要件も認められ,電通の請求はほぼ満額で認められました(損害賠償の額については,電通の請求200万円に対して50万円の限度で認定。)。

その他

12号のドメイン名について裁判で争われた事例は,その他に,薬品メーカー「エーザイ」が,ペットフードショップに対し,""e-zai.com""の使用差止等を求めた事件(東京地判平19.9.26),日立マクセルが,""maxellgrp.com""というドメインを使用していた者に対して損害賠償等を求めた事件(大阪地判平16.7.15)等があります。いずれも不正競争行為が認定されています。