IT・システム判例メモ

弁護士 伊藤雅浩が,システム開発,ソフトウェア,ネットなどのIT紛争に関する裁判例を紹介します。

ランキング評価最下位と名誉権 京都地判平26.9.4(平26ワ755)

ネットに掲載されたランキング表の最低評価を受けたことが名誉権侵害にあたるとして,サイト管理者の発信者情報開示を求めた事例。

事案の概要

あるウェブサイト(本件ウェブサイト)では,リフォーム業者の比較表のランキング表が掲載されていたが,リフォーム業者Xは,28社中の最下位として表示されていた。


そこで,Xは,レンタルサーバ管理者Yに対し,プロバイダ責任法に基づいて,本件ウェブサイトの発信者情報の開示を求めた。

ここで取り上げる争点

権利侵害の明白性

裁判所の判断

裁判所は次のように述べて権利侵害の明白性を認めた。

(1)  本件サイトは,「△△」の表題の元,外壁塗装リフォーム業者につき,「外壁塗装業者の提案力,品質サービス,作業員,価格,アフターサービスなどを利用者のアンケートを基に点数化してランキングを作成しました」との説明を付し,1位に点数21点のa社,2位以下10位までに,20点から14点までの点数が付されたb社,c社,d社,e社等の企業名が掲載されている。さらに,圏外として,「その他リフォーム業者比較表(50音順)」の欄が設けられ,18の企業につき点数が付されている。Xは,本件サイトにおいて,上記圏外の中で最も点数の低い9点が付されている。

(2)  上記(1)を内容とする本件サイトは,利用者のアンケートの結果として,外壁塗装業者である原告が,同業者28社中最下位の会社であることを具体的に摘示しており,Xの名誉,信用を含む人格権を侵害するものといえる。

(3)  他方,本件サイトにおける事実摘示につき,真実であることを裏付ける証拠は存在しない。

(4)  以上によれば,本件サイトは,Xの社会的評価を低下するものであって,名誉,信用を含む人格権を侵害することは明らかであるから,法4条1項1号所定の権利侵害の明白性が認められる。

その結果,裁判所はIPアドレス等の開示を認めた。

若干のコメント

「アンケートに基づいて作られた一覧表」という,一見すると客観性を有する事実の摘示であっても,名誉,信用を侵害し,真実であることの証拠は存在ないとして,権利侵害の明白性が認められた事案です(Yはレンタルサーバ事業者なので,真実性の立証はほぼ不可能)。


この事件は,一般紙などにも多く報道されました。たまたま同日,飲食店の口コミサイトの削除請求に関する判決も出されています(札幌地判平26.9.4)。


正当なアンケート結果に基づくものであるかどうか,というのは,第2ラウンドであるXと本件サイトの運営者との間の名誉毀損に基づく損害賠償請求訴訟で争われればよいので,この判断はやむを得ないものだと思われます。